『通貨の未来 円・ドル・元』 英『エコノミスト』編集部著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

通貨の未来 円・ドル・元

『通貨の未来 円・ドル・元』

著者
英『エコノミスト』編集部 [著]/池村 千秋 [訳]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784163904405
発売日
2016/04/15
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『通貨の未来 円・ドル・元』 英『エコノミスト』編集部著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

世界経済を複眼的に

 揺れ動く世界の情勢は、例えば輸入品の価格が変化する等、実は様々な面を通じて、日常生活に影響を与えている。世界を相手にビジネスをしていなくても、世界経済の動向をできるだけ把握しておくことは、今後ますます重要になるだろう。

 とはいえ、どんな本でその情報を得れば良いのかは、なかなか迷うところだ。本書は、イギリスで発行されている「エコノミスト」という雑誌に掲載された世界経済に関する記事、特に通貨に関する記事を中心に集めたものである。

 それに加えて、書き下ろしとして、この雑誌のシンクタンク部門がまとめた日本と円に関する未来予測の記事も収録されている。

 日本のマイナス金利を導入前に予測していたという宣伝文句にあるように、イギリスからの日本に関する分析や予測はかなり鋭いものがある。

 だから、この予測記事も興味深く、日本人読者としてはついそちらに目がいきがちだ。ただ、ここでむしろ注目したいのは、アメリカ経済や中国経済に関する分析記事のほうだ。

 通常、我々が目にする外国経済や外国政治に関する記事は、日本の記者の目を通してのものだったり、あるいはせいぜい、現地記者が書いたものの翻訳だったりする。しかし、本書は、それとは異なった視点を読者に提供してくれる。イギリスから見て、アメリカ経済はどのように評価できるのか、中国経済はどのように予測できるのかが書かれているからだ。

 複雑な世界経済を把握するうえで重要なことの一つは、複眼的な視点で、情報を判断することではなかろうか。一つの視点からだけ見ていると情報も判断も偏る恐れがある。

 その点で本書は、日本の読者に貴重な、通常とは違う視点を提供してくれる。イギリスというフィルターを通して世界をみることで、世界経済の動きがまた今までとは違って見えてくるに違いない。池村千秋訳。

 ◇The Economist=1843年にイギリスで創刊された週刊誌。現在の発行部数は約155万部。

 文芸春秋 1500円

読売新聞
2016年5月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加