『死を迎える心構え』 加藤尚武著

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死を迎える心構え

『死を迎える心構え』

著者
加藤 尚武 [著]
出版社
PHP研究所
ISBN
9784569827698
発売日
2016/04/21
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『死を迎える心構え』 加藤尚武著

[レビュアー] 納富信留(ギリシャ哲学研究者・東京大教授)

 死は私たち一人一人にとって免れない問題である。だが、私たちは自分の価値観や伝統や宗教を拠(よ)り所にし、死そのものから目を逸(そ)らしている。死が食い違う様々な見方に隠されているのは、あまりに大きな謎だからかもしれない。

 ヘーゲル哲学から生命倫理まで現代の哲学研究を牽引(けんいん)してきた著者は、年齢を重ねた今、古今東西の幅広い哲学思想、さらに自然科学、法律、宗教、文学、芸術までを総動員して、この問題に正面から挑む。最先端の生命科学は「寿命」のメカニズムを示し、熊沢蕃山(ばんざん)や宮沢賢治といった日本の先達は生への関わりを語りかける。

 そこで初めて問題の根深さも明らかとなる。「霊魂の不滅」を信じられなくなった現代に、人格や生命の尊厳はどう理解されるのか。死は先端医療の元でどう捉え直されるのか。死に方は何時(いつ)、誰が決定するのか。人生を記述する伝記が必要なのはなぜか?

 正解を持つ者はいない。コンパクトにまとめられた人類の知見を精査しながら、著者と共に心構えを探るため、私たち自身が生きるための一書である。

 PHP研究所 1600円

読売新聞
2016年5月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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