「おじぎ」の考古学ともいうべき一冊

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「おじぎ」の日本文化

『「おじぎ」の日本文化』

著者
神崎, 宣武, 1944-
出版社
KADOKAWA
ISBN
9784044000080
価格
968円(税込)

書籍情報:openBD

「おじぎ」の考古学ともいうべき一冊

[レビュアー] 図書新聞

 日常意識することなく行っている「おじぎ」。外国人からすれば異様に映るその所作の変遷を、古典や絵巻物からたどる文庫書き下ろし。おじぎは、宗教や武家礼法という思想面、畳や着物という環境面など複合的な要因で形作られてきたことがよく分かる。平安時代の『年中行事絵巻』を見ると、「身分の上下による違いがみられない」「天皇に対しても、さほどの緊張感がみられない」というから面白い。方言のように、おじぎにもさまざまなしきたりがあった。しかし明治時代に軍隊や学校を通じて、それは平準化されていく。平準化とは、形に宿っていた意味を剥奪することである。テレビで日々見かける誠意のないおじぎのルーツはこのあたりにあるのかもしれない。「おじぎ」の考古学ともいうべき一冊だ。(3・25刊、二二四頁・本体八八〇円・角川ソフィア文庫)

図書新聞
2016年6月4日号(3257号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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