『サービス立国論』 森川正之著

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サービス立国論 成熟経済を活性化するフロンティア

『サービス立国論 成熟経済を活性化するフロンティア』

著者
森川正之 [著]
出版社
日本経済新聞出版社
ISBN
9784532356927
発売日
2016/04/22
価格
2,916円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『サービス立国論』 森川正之著

[レビュアー] 柳川範之(経済学者・東京大学教授)

7割が働く一大産業

 サービス産業と言われて思い浮かべるのはどんな産業だろうか。旅館業だったり、理容業を思い浮かべると、経済全体の中では小さな産業と考えてしまうかもしれない。

 しかし、たとえばNTTなどの情報通信産業や、流通業や運送業、あるいは楽天やアマゾンといった会社を思い浮かべると、経済全体の中に占めるサービス産業の割合がかなり大きくなっていることが実感できるだろう。

 本書によれば、今や経済全体の7割の人がサービス産業で働いている。また、製造業の中でも情報技術等が発達したことで、サービス的な要素が高まっている。したがって、サービス産業の生産性を高めて、ここをいかにより発展的な産業にしていくかが、日本経済全体のとても重要な課題だ。本書は、そのような問題意識から書かれた力作である。

 サービス産業は、これだけ全体の中で大きな割合を占めるようになっているにもかかわらず、データや分析が少なく、その実態が十分に把握されているとはいえない。また、サービスという特性から、その生産性を実際に計測するのがなかなか難しい。

 ここでは、それらの問題にチャレンジをして、実態に関するかなり詳細な分析やエビデンスの提示が行われている。その結果、サービス産業はかなり業種間、企業間で多様性があり、その多様性を認識した政策等が必要なことが明らかにされている。

 そして、この本の大きな特徴は、日本経済全体の様々な課題が、サービス産業という切り口の下に分析されている点だ。

 たとえば、地域活性化や人口減少の問題、労働市場改革や人工知能が人々の職に与える影響等、日本が直面している課題やそれに対する現状の政策等のかなりの部分が網羅的に解説されている。専門用語等も出てくるが、関心のある個所を拾い読みするだけでも、かなり有意義な知識や情報を得られるに違いない。

 ◇
もりかわ・まさゆき
=1959年生まれ。経済産業研究所理事・副所長。著書に『サービス産業の生産性分析』など。

 日本経済新聞出版社 2700円

読売新聞
2016年6月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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