『奇妙な孤島の物語』 ユーディット・シャランスキー著

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奇妙な孤島の物語

『奇妙な孤島の物語』

著者
ユーディット・シャランスキー [著]/鈴木 仁子 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784309207018
発売日
2016/02/29
価格
3,132円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『奇妙な孤島の物語』 ユーディット・シャランスキー著

[レビュアー] 牧原出(政治学者・東京大教授)

 「生涯行くこともない50の島」についての地図の物語。著者は旧東ドイツに生まれ、国外渡航を夢見た少女時代、地図を眺めて思いをめぐらせた。地図上の青い海に囲まれた島々は、起伏を表す陰影とともに何事かを呟(つぶや)いているかのようだ。大洋の孤島をめぐっては、実在であれ架空であれ、数多くの物語が紡がれてきた。想像をかきたてる島。それを語るとは詩作だと著者は繰り返す。ロビンソン・クルーソー島のように、島の形は実に複雑だ。孤独、幻滅といった島名、山や入江の名も由来を物語る。多くの島がマゼランやクックなど探検家に発見され、上陸した人々は生き抜くことに苦闘する。疫病、飢餓、襲いかかる野生動物。そして人間同士の凄惨(せいさん)な闘い。激戦地の象徴としての硫黄島の頁(ページ)を見ると、独特な島名、摺(すり)鉢(ばち)山という地名など、世界の島々と比べても際立つ。思えば陸地とは皆、島である。遠方の島々は世界の縮図であり、その物語は人類史の断片なのである。鈴木仁子訳。(河出書房新社、2900円)

読売新聞
2016年6月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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