二十六年目の『陰陽師』【自著を語る】

レビュー

0
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『陰陽師』のすべて

『『陰陽師』のすべて』

著者
夢枕 獏 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784167906283
発売日
2016/06/10
価格
778円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

二十六年目の『陰陽師』【自著を語る】

[レビュアー] 夢枕獏(作家)

 一作目「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」を書いてから、ざっと二十六年。

 今、ぼくは六十一歳となっているわけだから、逆算すると三十代半ばの頃に、この物語を書きはじめたことになる。

 この間、漫画になり、映画になり、舞踊劇になり、歌舞伎にもなったりした。

 もちろん、書きはじめた当初は、晴明と博雅の物語を、これほど長い期間書くことになろうとは思ってもいなかった。

 書いた作品数は、長編、短編とあるが、タイトル数で八十編を超えた。あと数年で、百編を超えることになりそうである。

 今や、晴明も博雅も、ぼくの中に住みついてしまって、いつでも会いにゆくことができる状況にある。現在の感覚は、彼らの物語を書くというよりは、彼らに会いに行って、ふたりからその話を聴いてくる、といったものに近い。

 晴明と博雅だけでなく、道満や露子姫、蝉丸法師、賀茂保憲、蜜虫などのキャラクターたちも、自由に楽しそうに動いている。

 道満というキャラクターがぼくは好きで、ちょっと晴明にはできないようなこと、晴明だったらやらないようなことについては、この道満にやらせて楽しんでいるのである。

 今年から、あらたにふたりほど、レギュラーになりそうなキャラクターも現われて、時には、晴明も博雅も出てこないスピンオフ物語の主人公として、彼らを使うということも考えてゆきたいと思っているのである。

 実は、すでに道満しか出てこない作品をこのシリーズの中で書いているのである。

 他に、『源氏物語』の光の君を主人公にした『秘帖・源氏物語 翁―OKINA』という物語を、他社で書いたりしたのだが、こちらの作品にも、道満は重要な役どころで、光の君とからんでいるのである。

 今回の、この本は、ぼく自身が『陰陽師』を書く時の資料としても機能するほど、充実したものとなった。

『陰陽師』を書く時、読む時に、傍に置いておきたい本である。

 二〇一二年 九月二十九日

      ――小田原にて

(「あとがき」より)

文藝春秋 本の話WEB
2016年6月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

文藝春秋

  • このエントリーをはてなブックマークに追加