明文堂書店石川松任店「どんでん返し、好きですか?」【書店員レビュー】

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自薦 THE どんでん返し

『自薦 THE どんでん返し』

著者
綾辻行人 [著]/有栖川有栖 [著]/西澤保彦 [著]/貫井徳郎 [著]/法月綸太郎 [著]/東川篤哉 [著]
出版社
双葉社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784575518931
発売日
2016/05/12
価格
641円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

明文堂書店石川松任店「どんでん返し、好きですか?」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

ハードルなんて上げるもんじゃない。大口を叩いて得したことなんて、生きていて一度もない。普通はね、反感を買うだけだ。普通はね。《どんでん返し》を銘打つなんてハードルの上げ方(しかも自薦)、どう思います? とんでもないでしょ。身構えた読者からの反感を黙らせるには、じゃあどうすればいい? ハードルを超えるしかないよね。・・・・・・超えちゃうんだから、性質が悪いね、まったく。と、変な前置きはここまでにして。
鬱病気味で、重度のアルコール依存症に苦しんでいた大学の助教授(現在は准教授と呼ばれる役職ですね)の《私》は、病院の神経科で出会った女子生徒と恋に落ちる。《「あたし――あたしのこの身体、呪われているの」》。《私》が結婚の話を口にした時、彼女は自身の身体の秘密と数奇な人生を語り始める・・・・・・綾辻行人「再生」、ふらりと訪ねてきた探偵小説家の法月綸太郎が、《私》に話し始めたのは知人の大久保が恋人を殺して、その肉を食べたという異常な犯罪だった。大久保が人肉食に至った動機をめぐるカニバリズム論議の果てに明るみになる驚愕の動機。そして、あまりにもやるせない結末・・・・・・法月綸太郎「カニバリズム小論」。
自薦ということで「あっ、この人はこれなんだ」「へぇこの人は意外にも・・・・・・」と既に読んだことがある人はそういう楽しみ方ができるかもしれない(思い入れのある作品を作者が自薦で選んでいたら嬉しくないですか?)し、アンソロジーの一篇として再読することで前とは違った感想を抱くかもしれない。すべて初めてという方は名手たちが紡ぎ出す傑作群に溺れて欲しい。

トーハン e-hon
2016年5月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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