明文堂書店石川松任店「素晴らしきギャグ&ミステリの世界」【書店員レビュー】

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明文堂書店石川松任店「素晴らしきギャグ&ミステリの世界」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

《とある警察署》の《とある警官》の失態によって暴行犯が所持していた密造拳銃が流出してしまった。そして何者かの手に渡った拳銃によってホームレスが射殺される。さらにその銃によって十乗寺食品で財を成した十乗寺家の屋敷でも殺人事件が起こる。十乗寺食品の会長である十乗寺十三から孫娘の花婿候補の女性関係を調査して欲しいと依頼を受けていた探偵の鵜飼もその場に居合わせて・・・・・・。
本書は恋人に振られた青年・戸村流平の災難(というかちょっと自業自得)を描いた『密室の鍵貸します』に続く、《烏賊川市》シリーズの第二作目に当たる。大学を中退し、鵜飼探偵の助手(みたいなもの)になった戸村流平君が、あの事件を経ても何一つ変わらない(成長していない)のが微笑ましい。
持ち逃げされた拳銃、美しき令嬢のほのかな恋心、密室による殺人。いくらでもシリアスな展開にできる設定なのに、絶対にそっちには流れない。拳銃流出の失態の話になると逃げ出す《とある警官》、かすり傷でわめく探偵、恋心を抱く相手を分厚い本でなぐる令嬢。素晴らしい世界観です。そしてギャグの中にさりげなく(あるいは大胆に)散りばめられる伏線の数々。
にやにやしながら読んでいた部分に施された著者の仕掛けに心地よく騙される。贅沢な一冊です。

トーハン e-hon
2016年5月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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