『脳はなにげに不公平』 池谷裕二著

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脳はなにげに不公平

『脳はなにげに不公平』

著者
池谷裕二 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784023314948
発売日
2016/03/18
価格
1,404円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『脳はなにげに不公平』 池谷裕二著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 相性の良い人がいるように、相性の良い本がある。僕にとっては著者の本がそれで、今回も期待に違(たが)わず、目から鱗(うろこ)が落ちまくった。

 「3人」以上は「みんな」、脳が瞬時に把握できる個数は3つまで。上流階級ほどモラルが低い。確かに。私たちの知性は、知らず知らずのうちに他人の強い影響下に置かれた「傀儡(かいらい)知」で、しかも、周囲に操作されていることに気づかず、「自分で判断した」と勘違いしている。「なんでもお金で買える」と考えた瞬間、お金は心を潤す泉水から、心を枯らす除草剤へと変貌する。第二言語の習得は遺伝的要因が約7割(英語が上達しない理由がよく分かった)。自然界が排除してきた「悪(あ)しき遺伝子」を、文明という大義名分のもとで温存してきたのが人類。自然破壊は自然自傷と言うべき(ヒトは自然の産物)。性善説は正しい。くすぐったさはユーモアの原型。感情は表情よりも身体に表れる等々。

 脳の本を読むのは楽しい。脳の誕生は世界の意味の創造と同意。なぜなら脳が生まれたからこそ、世界を眺め世界を解釈できるのだから。

 朝日新聞出版 1300円

読売新聞
2016年6月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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