8人のデビュー作を徹底的に読み解く『デビュー小説論 新時代を創った作家たち』清水良典著

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8人のデビュー作を徹底的に読み解く『デビュー小説論 新時代を創った作家たち』清水良典著

[レビュアー] 産経新聞社

 村上龍、村上春樹、そして山田詠美…。気鋭の文芸評論家が〈いま現代文学と呼んでいるものは、彼らの登場から始まったといっても過言ではない〉と評する8人のデビュー作を徹底的に読み解く。

 春樹の『風の歌を聴け』にシニカルな無常観が漂うように、龍の『限りなく透明に近いブルー』には廃虚のような虚無がある。高橋源一郎の『さようなら、ギャングたち』には高度資本主義がもたらした世界の変容に追いつけない言葉の悲哀が刻まれている。高度経済成長下で育ち、新たな小説世界を切りひらいた彼らの特質に迫る。出色の戦後社会論でもある。(講談社・1800円+税)

産経新聞
2016年6月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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