『歴史家の城歩き』 中井均、齋藤慎一著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

歴史家の城歩き

『歴史家の城歩き』

著者
中井 均 [著]/齋藤 慎一 [著]
出版社
高志書院
ISBN
9784862151582
発売日
2016/05/20
価格
2,700円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『歴史家の城歩き』 中井均、齋藤慎一著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

第一人者が熱く談議

甲 対談本を書評するからって、別に僕らまで対談することはないと思うんだけど、ともかく君が薦めてくれたこの本は面白かったよ。戦国時代の城を研究している二人が、ひたすらマニアックに城談議をしていて。こんな本は初めてだね。

乙 中井さんは関西の城を中心に考古学からアプローチ、齋藤さんは関東の城を古文書から研究しているんだ。それぞれ対象地域や方法論が微妙に違うけど、双方の分野の第一人者だから、自然に会話にも熱が入るよな。新見解もポンポン飛び出すし。

甲 前半は二人で実際に城跡を歩きながら喋(しゃべ)ってるんだけど、古い道や土塁を見つけると、「しかし、齋藤さん、よくこの道を見つけたね!」とか、「これはすばらしいとしか言いようがない!」とか言って。いい大人が完全に童心に帰っちゃってる(笑)。建物も石垣も残っていない、ただの城跡なのに、こんなに盛り上がれるなんて。本当に城を愛している者同士が語り合っている感じがして、こっちまで嬉(うれ)しくなってきたよ。この本を作った編集者は、すごいな。

乙 Hさんって言って、たった一人で歴史・考古学系の出版社を経営しているんだ。学界の名物男だよ。

甲 各章の冒頭にQRコードがあって、そこにアクセスすると城跡の写真がいっぱい上がっているのにも驚いた。遊び心満載。

乙 でも、研究者でもない君には、この本は難しくなかったかい?

甲 いやいや、世間の歴史好きを舐(な)めてもらっちゃ困るよ(笑)。たしかに専門用語が多くて、ついていけないところもあったけど、対談だから、そこは読み飛ばしても全然問題なかった。なにより、細かい意味は分からなくても、プロの研究者の人柄や本音の主張が垣間見られたのが良かったよ。研究者が書いたものだけからは、我々にはそのへんの舞台裏はなかなか見えてこないからね。

乙 えらく気に入ってくれたようだね。学会でHさんに会ったら、君の感想、伝えておくよ。きっと喜ぶぞ。

 ◇なかい・ひとし=滋賀県立大教授(中世考古学)

 ◇さいとう・しんいち=江戸東京博物館学芸員(文献史学・中世史)

 高志書院 2500円

読売新聞
2016年6月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加