『未確認動物UMAを科学する モンスターはなぜ目撃され続けるのか』
- 著者
- ダニエル・ロクストン [著]/ドナルド・R・プロセロ [著]/松浦 俊輔 [訳]
- 出版社
- 化学同人
- ISBN
- 9784759818215
- 発売日
- 2016/05/21
- 価格
- 4,180円(税込)
未確認動物 UMAを科学する D・ロクストン&D・R・プロセロ 著
[レビュアー] 田中聡(作家)
◆欲望を映すネッシー
アメリカの巨大な類人猿ビッグフット。異様な姿の大海蛇シーサーペント。コンゴの恐竜モケーレ・ムベンベ。ヒマラヤの雪男イエティ、そしてネス湖のネッシー。これらUMA(謎の未確認動物)界の大御所たちは、はたして実在するのか。本書はこれまでの証言や証拠を科学的に検証する。
結果は惨澹(さんたん)たるものだ。とにかく嘘(うそ)や捏造(ねつぞう)が多い。主要な映像や足跡はほぼ全滅。捏造とは言い切れない写真も曖昧すぎて証拠にならない。悪戯(いたずら)、詐欺、そして信じたい人々の思い込み。じつはネス湖の場合、全域が湖底まで調査され尽くしているので、懐疑派はとっくに可能性ゼロと断じていた。しかし今でもネッシーは人気だ。著者の求める科学的リテラシーなんか知ったこっちゃないのが人の世である。ネッシーはネス湖ではなく、人間社会に棲(す)んでいるのだ。
本書の綿密な検証は、またUMAのフォークロアや変容史でもある。「巨人」や「巨竜」という神話的な原型に重なるUMAは、人間の知の歴史を伝えている。そのイメージは、博物学や古生物学、SF小説や映画などの影響のもと、捏造証拠などを契機として成長し、ジャーナリズムや観光業、地域振興に利用され、定着してきた。知と欲望の海を泳ぎ渡るモンスターを探求することは、すなわち人間を探求することにほかならない。
(松浦俊輔訳、化学同人・4104円)
<Daniel Loxton> 編集者・ライター。
<Donald R.Prothero> 古生物学者。
◆もう1冊
山口敏太郎著『未確認生物UMA衝撃の新事実』(宝島社)。猿人型、猛獣型、恐竜型など百四十体の目撃談を検証。