未確認動物 UMAを科学する D・ロクストン&D・R・プロセロ 著

レビュー

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未確認動物 UMAを科学する D・ロクストン&D・R・プロセロ 著

[レビュアー] 田中聡(作家)

◆欲望を映すネッシー

 アメリカの巨大な類人猿ビッグフット。異様な姿の大海蛇シーサーペント。コンゴの恐竜モケーレ・ムベンベ。ヒマラヤの雪男イエティ、そしてネス湖のネッシー。これらUMA(謎の未確認動物)界の大御所たちは、はたして実在するのか。本書はこれまでの証言や証拠を科学的に検証する。

 結果は惨澹(さんたん)たるものだ。とにかく嘘(うそ)や捏造(ねつぞう)が多い。主要な映像や足跡はほぼ全滅。捏造とは言い切れない写真も曖昧すぎて証拠にならない。悪戯(いたずら)、詐欺、そして信じたい人々の思い込み。じつはネス湖の場合、全域が湖底まで調査され尽くしているので、懐疑派はとっくに可能性ゼロと断じていた。しかし今でもネッシーは人気だ。著者の求める科学的リテラシーなんか知ったこっちゃないのが人の世である。ネッシーはネス湖ではなく、人間社会に棲(す)んでいるのだ。

 本書の綿密な検証は、またUMAのフォークロアや変容史でもある。「巨人」や「巨竜」という神話的な原型に重なるUMAは、人間の知の歴史を伝えている。そのイメージは、博物学や古生物学、SF小説や映画などの影響のもと、捏造証拠などを契機として成長し、ジャーナリズムや観光業、地域振興に利用され、定着してきた。知と欲望の海を泳ぎ渡るモンスターを探求することは、すなわち人間を探求することにほかならない。

 (松浦俊輔訳、化学同人・4104円)

<Daniel Loxton> 編集者・ライター。

<Donald R.Prothero> 古生物学者。

◆もう1冊 

 山口敏太郎著『未確認生物UMA衝撃の新事実』(宝島社)。猿人型、猛獣型、恐竜型など百四十体の目撃談を検証。

中日新聞 東京新聞
2016年6月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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