『あるミニマリストの物語』 ジョシュア・フィールズ・ミルバーン、ライアン・ニコデマス著

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あるミニマリストの物語―僕が余分なものを捨て人生を取り戻すまで

『あるミニマリストの物語―僕が余分なものを捨て人生を取り戻すまで』

著者
ジョシュア・フィールズ・ミルバーン [著]/ライアン・ニコデマス [著]/吉田俊太郎 [訳]
出版社
フィルムアート社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784845915859
発売日
2016/04/08
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『あるミニマリストの物語』 ジョシュア・フィールズ・ミルバーン、ライアン・ニコデマス著

[レビュアー] 牧原出(政治学者・東京大教授)

 2010年前後のアメリカ。社内若手の稼ぎ頭だったジョシュアは、Windows Vistaのパソコンや、ブラックベリーを片手にメールのやりとりに追われている。高給だが空疎な生活の中、シングルマザーでアル中だった母の死を知らされる。遺品の中には密封された小学生時代の試験答案の箱四つ。本当の記憶は心の中にあるはずだ、と気づいたジョシュアはすべてを処分する。そして離婚直後の自宅にある大量の私物も処分。ツイッターのアカウントを作り、種々のつぶやきを眺めている内に、最小限必要なものだけで生活する「ミニマリスト」の生き様に心を揺り動かされていく。

 消費欲凄(すさ)まじいアメリカ社会では、ミニマリストも日本人の平均並。とはいえ本書の特色は、どうしてそういう人生を選び取ったのか、他のミニマリストの言葉をあげつつ列伝風に物語るところ。残されたものをことのほか愛(いと)おしむ。一見ハイセンスなライフスタイルがそこから醸し出される。そして相棒のライアンが、ジョシュアの大げさな回想に注で正す掛け合いも微笑(ほほえ)ましい。吉田俊太郎訳。(フィルムアート社、1800円)

読売新聞
2016年6月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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