『フロックコートと羽織袴』 小山直子著

レビュー

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フロックコートと羽織袴: 礼装規範の形成と近代日本

『フロックコートと羽織袴: 礼装規範の形成と近代日本』

著者
小山 直子 [著]
出版社
勁草書房
ISBN
9784326602889
発売日
2016/03/26
価格
4,104円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『フロックコートと羽織袴』 小山直子著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

 フロックコートとシルクハットという近代日本の紳士の典型像は、どのように形成されたのか。本書はその謎を、礼装の歴史を繙(ひもと)いて明らかにしている。

 フロックコートは、西洋化という国家方針に基づいて礼装とされた。しかし、実はその「西洋」は多分に日本化されたものであり、西洋諸国の実態からずれていた。著者は、明治30年代に礼装のルールが定着するに至った過程を考察している。翻弄される「紳士」たちの姿が印象的である。

 洋装に比べて和装は、国家から冷遇されていた。紋付羽織袴(はかま)では、国家的行事に出席できず、勲章も着用できなかった。そのため洋服を持たない地方の名士などから不満の声が上がり、原敬内閣のもとで、ようやく紋付羽織袴での勲章着用が可能になったという。

 和と洋がせめぎ合った日本の近代化。礼装の変化を通して、そのダイナミズムが見えてくる。(勁草書房、3800円)

読売新聞
2016年6月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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