明文堂書店石川松任店「表題作は、純愛ホラーの傑作!」【書店員レビュー】

レビュー

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BB/PP

『BB/PP』

著者
松浦 寿輝 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784062200318
発売日
2016/06/21
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

明文堂書店石川松任店「表題作は、純愛ホラーの傑作!」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

《世界のことも異性のことも何も知らない、真っ白なカンバス地のような女。BBが欲しいのはそれだった。》二十一世紀初頭から七、八十年ほど経った近未来、沙汰のかぎりを尽くし、生身の女に飽きてしまった男が買ったのは、タイレル社製ヒト型人工フェミニン擬體F-3000というAIを持った女だった。男は女をPP(Purple Pubes)と呼び、自身をBB(Blue Beard)と呼ばせた。研ぎ澄まされた文章の中に、狂気的な愛とかすかな甘酸っぱさが宿る純愛ホラーの傑作……「BB/PP」、フランクフルトを発つ直前に〈詩人〉から、カレル橋(チェコ共和国にある橋の名称)のたもとで会おうと短いメールを受け取った〈官僚〉だったが、そこに現れたのは一緒に会う約束をしていた〈探偵〉だけだった。〈官僚〉を案内する〈探偵〉は、〈詩人〉の会話を避けているようで……。読者を幻惑するような独特な雰囲気を持つ……「四人目の男」。
バラエティに富んだ9篇の短編が並んでいますが、そのほとんどの作品に共通するものとして《老い》と《記憶》があります。切なかったり、残酷だったりと作品によって色々ですが、余韻の残る作品ぞろいです。
まずことばの力に圧倒されてしまいます。「石蹴り」という短編の中に、《おとなになったわたしは紙のうえにことばを書きならべてそれを売るというさして面白くもない商売をするようになった。》という記述があります。もちろんフィクションである以上、これを著者本人の声だとことば通りに判断してはいけませんが、その《面白くもない商売》を選んでくれたことに読者は感謝しなきゃいけませんね。紙のうえに書きならべられたことばによって描き出されたその世界はあまりにも凄まじい。すごいですよ。この作品集は。

トーハン e-hon
2016年7月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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