『科学の曲がり角』 フィン・オーセルー著

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科学の曲がり角

『科学の曲がり角』

著者
フィン・オーセルー [著]/矢崎裕二 [訳]
出版社
みすず書房
ジャンル
自然科学/物理学
ISBN
9784622079873
発売日
2016/05/26
価格
8,856円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『科学の曲がり角』 フィン・オーセルー著

[レビュアー] 柴田文隆(読売新聞社編集委員)

 量子力学の確立、原子核物理の発展など戦間期は科学界にとっても怒濤(どとう)の20年だった。当時、科学界を主導した一人がデンマークの理論物理学者ニールス・ボーア。

 純粋な好奇心、広範な国際協力で研究を推進した物理学界の慈父であり(ナチスの迫害から多くのユダヤ系研究者を救った)、アインシュタインとの容赦ない論争で量子論を進展させた厳父だった。

 多彩な活動は『ニールス・ボーアの時代 1・2』などに詳しいが、本書は有能な研究所管理者、敏腕な資金調達者としてのボーア像に焦点を絞り、掘り下げている。

 1930年代、ロックフェラー財団は研究費を、遅れていた生物学へ重点配分することを企図。一方、ボーアは自分の研究所を核物理学の拠点に転換したいと考えていた。

 野望実現のため彼は自分の名声を利用したし、生物学研究の名目で資金を申請し、核物理研究に必要な装置を獲得するしたたかさも持ち合わせていた、と膨大な資料にあたった著者は見る。

 世故に長(た)けたボーア、というイメージは新鮮。彼が一層大きく見える。矢崎裕二訳。

 みすず書房 8200円

読売新聞
2016年7月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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