『地形で解ける! 東京の街の秘密50』 内田宗治著

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『地形で解ける! 東京の街の秘密50』 内田宗治著

[レビュアー] 高野ムツオ(俳人)

 一口で言うなら東京観光ガイドブック。但(ただ)し、名所旧跡やブランド名店の案内書ではない。東京という街が、どう形作られてきたか。地形とその利用の歴史に光を当て、そこにもう一つの東京を浮かび上がらせたものだ。なぜ家康は江戸を根拠地としたか。丘には誰がどんな理由で住むようになったか。谷はどう形成され、どう利用されてきたか。

 平面上にしか認識していなかった東京が、3D画像のように立体化してくる。山手線や中央線が、いかに山を越え、谷を渡っているのか。読後、車窓の景色も異なってくる。

 幕府が開かれた頃の江戸は六万人が住み、人口は急激に増えた。多くの人間が集中して住むために不可欠な一つに水の供給がある。それはどんなアイデアと努力によって可能となったか。その苦心の跡は、現在、東京のどこに残っているか。そんなことにも思い巡らせることができる。

 また、下町地域の地盤沈下の原因は地下水の汲(く)み上げとメタンガスの採取に拠(よ)るという。自然災害の頻繁な昨今、お台場の海を眺めながら東京の未来を考えるにも、もってこいである。

 じっぴコンパクト新書 800円

読売新聞
2016年7月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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