『《ドン・キホーテ》見参!狂気を失った者たちへ』桑原聡著
[レビュアー] 産経新聞社
ドン・キホーテの狂気に少しばかり感染した初老の男が、平成日本に石を投げつけるがごとく、本紙オピニオン面に書きなぐったコラム「鈍機翁(どんきおう)のため息」が単行本となった。
著者はセルバンテスが書いた大長編のエッセンスを抽出してその筋を忠実に紹介、そのうえで「これは」と思う主従の言葉を拾い上げ、さまざまな古典から学んだ知識をまぶして読者に投げつける。それは、すっかり小利口になってしまった日本人に対する異議申し立てなのだ。これから『ドン・キホーテ』に挑戦しようという者にとっては、格好の誘(いざな)いの書である。(水声社・2500円+税)