コミュニケーションの極意は、“教えたいことは何か”

レビュー

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「自分の言葉」で人を動かす

『「自分の言葉」で人を動かす』

著者
木暮太一 [著]
出版社
文響社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784905073437
発売日
2016/05/20
価格
1,364円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

コミュニケーションの極意は、“教えたいことは何か”

[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)

 コミュニケーションに難を抱えている人はいつの時代にも大勢いるのだろう。話し方や伝え方の本は次から次へと出版されている。ヒットしている本もあるけれど、あまりに多く出ているので、どれを買ったらいいのかわからないという人も多い。書店員のとき、そんな人達には、池上彰の『伝える力』(PHP研究所)と、佐々木圭一の『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)などを薦めていた。どちらもベストセラーとなっていて、いまも伝え方の定番書として売れ続けている。また自己啓発の名著D・カーネギーの『人を動かす』(創元社)も、伝え方の気づきに満ちているのでオススメだ。

 そんな定番書にも引けをとらない、新たな伝え方の名著を発見したので紹介しよう。木暮太一の『「自分の言葉」で人を動かす』だ。この本の素晴らしさは、伝え方の極意をものすごくわかりやすい一文で示していることにある。“「教えたいことは何か?」という視点で自分の中から言葉を引き出せば、これまでとまったく違う言い方ができるようになります”と著者はいう。ここを読むだけで、この本を買った価値は十分すぎるほどある。

 営業を例にとろう。営業をする際、商品のことを知ってもらおうと、ディテールまで事細かに説明する人が多い。会話でもそうだが、言いたいことのすべてを話しても、それが「相手にはどうでもいい」と思うことだったら、話は伝わらない。ここで「教えたいことは何か」という視点を取り入れてみる。全体像はいったん忘れて、その商品について、自分がいいと思ったことだけを話す。そうすると、その言葉には嘘がないので、確実に相手に伝わるというわけだ。

 実はこれ、私が書いているレビューも同じなのだ。本を読んで自分の感情が揺れた「震源地」をみつけ、そのことを言葉にしている。今回のレビューで私が伝えたいと思ったことは一つだけだ。それは「教えたいことは何か」という視点で話すとはどういうことか?である。それ以外のことはなにも言っていない。この方法を使えば、あなたの話もきっと伝わるようになるはずだ。

新潮社 週刊新潮
2016年7月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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