はがれる“自称”保守の化けの皮 保守理解のためのテキスト

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はがれる“自称”保守の化けの皮 保守理解のためのテキスト

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 20歳で自由主義者でない者は心がない、40歳で保守主義者でない者は脳がないとチャーチルが言ったって話、やっぱり嘘だったかと踏ん切りがついたのは、宇野重規の『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』のおかげ。

 保守主義の祖たるバークは自国の名誉革命は肯定したし、アメリカの求める政治的自由にも寛容で、古典的な意味での自由主義者。フランス革命を目の敵にしたのは、アレが急進的すぎたせいで、つまり保守主義は進歩主義への反発から生まれたもの。いずれの根にも自由主義がある……と説かれると、チャーチルが保守主義の対立概念として自由主義を持ち出すのは妙に思えるんでね。

 もっとも、20世紀以降は共産主義・社会主義との絡みで自由主義にいわゆるリベラルなる新しい意味も生まれたゆえ、実はもうちょっとややこしいんだけれど、そのややこしさまでを著者は解きほぐしてくれる。

(自称も含む)保守についての書は幅広く底無しにあって、でも、その大半は保守の徒による保守宣伝のためのパンフレット。一方、この新書は「必ずしも自らを保守主義者とは考えていない」政治学史・政治思想史の研究者による保守理解のためのテキスト。速すぎる進歩へのブレーキだったはずの保守が、右に切れすぎるステアリングやら後退ばかりのトランスミッションやらに化けてるのは、アクセルとしての進歩が停滞したためという読み筋も的確で、心塞がれます。

新潮社 週刊新潮
2016年7月21日参院選増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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