『未確認動物UMAを科学する』 ダニエル・ロクストン、ドナルド・R・プロセロ著

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『未確認動物UMAを科学する』 ダニエル・ロクストン、ドナルド・R・プロセロ著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

否定せずに楽しもう

 恒例、夏休みの自由研究のネタになるお勧め本の第一弾。「モンスターはなぜ目撃され続けるのか」という副題にまずご注目を。

 著者の二人は、未確認動物通の科学ライターと古生物学者のコンビだ。未確認動物とはビッグフット、イエティ、ネッシー、シーサーペントなど、昔から多くの目撃証言があり、絵や写真や動画が残され、様々なアプローチで探索も行われているのに、未(いま)だその実在が確証されていないモンスターたちのこと。我が国ではツチノコがその代表選手になるだろう。本書はそれらが伝説のなかで血肉を得てきた歴史と経緯を個々に手際よく紹介し、著名な目撃例や写真等に検証を加えて分析してゆく。モンスターの側に力点を置いた「いるのか、いないのか」論ではなく、モンスターを目撃する私たち人間の側から、おぼろな存在であり続けるモンスターの謎を探ってゆくのだ。

 「本書は現代の未確認動物学に関する決定版となる本である」

 序文でそう書いているマイケル・シャーマーは懐疑主義の科学史学者だし、版元は硬派な化学同人だし、「要するに否定本なんでしょ?」と冷たくあしらわないでほしい。著者たちは未確認動物を否定するのではなく、正しく理解し、楽しみ、考えようと説いているのだ。科学的な検証をきちんと尊重する大人のUMA通になろうよ、と。松浦俊輔訳。

 この分野には類書も多いが、次は本書第6章に登場するコンゴのモンスター「モケーレ・ムベンベ」を実際に現地へ乗り込んで探索した顛末(てんまつ)を綴(つづ)った『幻獣ムベンベを追え』(高野秀行著、集英社文庫)はいかがだろう。また第7章にあるとおり、多くの未確認動物にはなぜか超自然の要素がつきまとう。モンスターだけでなく、UFO、心霊現象や超古代文明など、不可思議な事象について幅広く基礎的な知識を得るなら、ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)の『謎解き』シリーズ(彩図社)がばっちり参考になりますよ。

 ◇Daniel Loxton=「Junior Skeptic」編集者

 ◇Donald R.Prothero=ロサンゼルス自然史博物館所属。

 化学同人 3800円

読売新聞
2016年7月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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