『脳・心・人工知能』 甘利俊一著

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脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす

『脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす』

著者
甘利 俊一 [著]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784062579681
発売日
2016/05/20
価格
972円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『脳・心・人工知能』 甘利俊一著

[レビュアー] 岡ノ谷一夫(生物心理学者・東京大教授)

 このごろ毎日のように人工知能(AI)という言葉を目にする。ある時は、介護や貧困など諸問題を解いてくれる夢の技術として、ある時は、仕事を奪い、格差を拡大し、戦争を機械化する脅威の技術として。AIとは何か。脳と心の理解を推進するのか。本書は、脳科学と数理科学をAIで結びつける努力を50年以上続けてきた碩学(せきがく)による、この分野の歴史と現状そして未来が展望できる入門書である。

 一読心に残るのは、今のAIを可能にした2つの基盤技術、誤差逆伝播学習と深層学習は、元々著者を中心とした日本人によって開発されたという事実だ。米国生まれではない。だからこそ産業応用は民間に任せ、日本の研究者はAIを学問として牽引(けんいん)するべきだと著者は主張する。

 随所に現れる著者の呟(つぶや)きが彩りを添える。大学の研究者に先を見る余裕を与えよ、短期的な成果を求めるな、くだらない管理業務から解放せよ。碩学ならではの発言だ。環境の改革なくしてAI研究を主導することはできまい。政策担当者がこの思いを真摯(しんし)に受け取ってくれることを祈る。

 講談社ブルーバックス 900円

読売新聞
2016年7月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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