『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学』 山口真美著

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自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学 (岩波ジュニア新書)

『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学 (岩波ジュニア新書)』

著者
山口真美 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784005008315
発売日
2016/05/20
価格
929円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学』 山口真美著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

正確には見えないもの

 中高生の皆さんに、夏休みのお勧め本の第二弾。なかなか刺激的な本書のタイトルの問いかけに答えるなら、私の場合はずばり「嫌い」だ。理由は単純、私の顔は私の好みじゃない。好きなタイプじゃないのだ。容姿は自分でチョイスできないし、そこに(自分にとって)望ましい要素を足したり引いたりするには、ほとんどの場合、苦しい努力や多額の出費を必要とし、それでも易々(やすやす)と思うようにはならない。ちょっとでも悩んだことのない人はいないはず。

 ところが、そんな私たち人間は、実は誰も正確に自分の顔を見ていないのだという。毎日何度も鏡でチェックしてる? いえいえ、それはかえって逆効果。本書にはこうある。

 「同じ顔を見続けると、その顔の見方はゆがむことが実験からわかっています」

 ビックリでしょ? さらに、顔を見るときによく働く部位は脳の右側にあり、ややこしいことに「左右それぞれの脳には、目の前の視野の反対側の映像が入っていきます」ので、「左側に見える顔が、顔を担当する脳に影響を与え、印象を強くつくり出している」。だから鏡に映る左右が逆転した顔は、その個人本来の顔――あるいは他者が見ているその人の顔とはかなり印象が違うはずで、「みなに見られている顔とは違うものだといえるでしょう」。

 でも写真なら決定的に正確でしょって? 残念ながらこれもNG。写真の顔の印象は表情に大きく左右され、表情が変われば別人のように見える。これもビックリの実例をご覧あれ。

 表情は、その人の内面が目に見える形であらわれたものだ。活(い)き活きした表情は他者とのコミュニケーションのなかで生まれる。だから本書の締めくくりには、素敵な一文が登場する。

 「顔は人との間にできあがる」

 齢(よわい)五十五の私が今でも嫌っているのは自分の顔じゃなく、「顔立ち」の方なのか。顔とは和解できてる? しみじみ鏡を見ちゃいました。

 ◇やまぐち・まさみ=中央大学教授。専門は実験心理学。著書に『発達障害の素顔』など。

 岩波ジュニア新書 860円

読売新聞
2016年7月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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