『水屋・水塚 水防の知恵と住まい』 住友和子編集室+村松寿満子編

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『水屋・水塚 水防の知恵と住まい』 住友和子編集室+村松寿満子編

[レビュアー] 稲泉連(ノンフィクションライター)

 今年も豪雨のニュースが頻繁に報じられる季節になった。近年、毎年のように激甚な水害や土砂災害が起こっているが、国土の多くが急峻(きゅうしゅん)な山である日本は、今も昔も水害と闘い続けてきた歴史を持つ。本書で紹介されるのは、その中で日本人が作り上げた水防の知恵――水屋や水塚と呼ばれる盛土の上に建築された建物だ。

 写真は木曽三川の輪中内にある水屋。普段は味噌(みそ)や醤油(しょうゆ)、米といった食料の備蓄庫、洪水時には避難小屋になるもので、立派な石垣が独特の景観を生み出している。

 日本全国の水屋に刻まれている過去の洪水の記憶が、土地の人々の口から語られる。「段蔵」「助命壇」「舟形屋敷」、さらには欄干に畳を挟み込んで洪水を防ごうとする「畳堤」が興味深い。

 様々な工夫が凝らされた水屋を見ていると、日本人が水との闘いを文化へと深めてきたことが分かる。厳しい国土と共生してきた先人の心に触れる一冊だ。

 LIXIL出版 1800円

読売新聞
2016年7月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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