化粧の日本史 山村博美 著

レビュー

6
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化粧の日本史

『化粧の日本史』

著者
山村 博美 [著]
出版社
吉川弘文館
ジャンル
歴史・地理/歴史総記
ISBN
9784642058278
発売日
2016/05/20
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

化粧の日本史 山村博美 著

[レビュアー] 和田博文(東洋大教授)

◆文化を映して移ろう

 日本人の化粧はどのような文化的特性を持ち、どのように変化してきたのだろうか。化粧の範囲は広いが、本書は中心をメイクアップにしぼることで、通史を描き出すことに成功している。

 歴史は以下の三期に分けられる。(1)大陸風の化粧が流通する平安前期まで(2)日本の伝統的な化粧が成熟する江戸時代まで(3)欧米風の化粧が一般化する現在まで。日本の伝統的な化粧は、白・赤・黒の三色である。このうち中国や朝鮮半島になかったのはお歯黒。化粧したのは女性だけではない。平安後期には公家の男性に、やがて身分の高い武士に、化粧が広まっていく。戦国時代の島津家ではお歯黒が日常の身だしなみになっていた。

 化粧の目的は美だけではない。化粧には身分・階級・年齢・未既婚などの、社会的表示機能が備わっていた。江戸時代の化粧は、女性が基本的な担い手。白い歯と眉は未婚を、お歯黒は既婚を、眉剃(まゆそ)りは子持ちを意味していた。婚期を逃した女性は世間体から、お歯黒にしたという。幕末に来日した西洋人は、異国のお歯黒と眉剃りに後ずさりした。

 団塊の世代は、西洋的なメイクを大衆化させる。ただ私たちが驚くのは、本書が明らかにする古い時代の情報だろう。現在の化粧のモードも、時代と文化に規定された、過渡的な表象にすぎないことを、歴史が教えてくれるからである。
 (吉川弘文館・1836円)

 <やまむら・ひろみ> 1961年生まれ。化粧文化研究家。共著『世界の櫛(くし)』など。

◆もう1冊 

 ポーラ文化研究所編『明治・大正・昭和の化粧文化』(ポーラ文化研究所)。美容・化粧・髪形などの変遷をたどる。

中日新聞 東京新聞
2016年7月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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