明文堂書店石川松任店「サービス精神旺盛な不条理エンターテイメントの傑作!」【書店員レビュー】

レビュー

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鹿男あをによし

『鹿男あをによし』

著者
万城目 学 [著]
出版社
幻冬舎
ISBN
9784344414662
価格
741円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

明文堂書店石川松任店「サービス精神旺盛な不条理エンターテイメントの傑作!」【書店員レビュー】

[レビュアー] 明文堂書店石川松任店(書店員)

大学の研究室での人間関係が悪化したことが原因で、奈良県にある女子校《奈良女学館高等学校》に二学期の間だけ教師として赴任することになった《おれ》は、生徒との関係がうまくいかず悩んでいた。そんな折、《おれ》は鹿の声を耳にしてしまう。「さあ、神無月だ――出番だよ、先生」。
鹿からある役目を担わされた青年の奮闘を書いた、不条理だけど、めっぽう面白い一冊です。鹿とのやりとりによって起こる不条理な展開や徐々に壮大さを帯びてくる世界観はもちろん素晴らしく心惹かれるのですが、それと同じくらい(もしかしたらそれ以上に)に語り手の成長や部活での試合といった作中の《普通》の部分も素晴らしく、強く印象に残りました。
変な話ですが、昔、飛んでいた虫が人に見えていた時期がぼくにはありました。もしかしたらそのすこし前に、カフカの『変身』を読んでいたからかもしれません。目が覚めると虫になっていた、というあの名作のような展開が現実に起きているのかもしれない、と・・・・・・。本書を読んでいる時、それに近い想像が頭に浮かびました。この現実世界のどこかで鹿に話しかけられている人がもしかしたらいるかも・・・・・・と変な想像をしたらすこしだけわくわくしました。そんな変な想像をしてしまうほど、ぼくはこの小説世界に惹かれてしまいました。忘れがたいインパクトを持つサービス精神旺盛な不条理エンターテイメントの傑作です。

トーハン e-hon
2016年7月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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