『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』 辛酸なめ子著

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辛酸なめ子の世界恋愛文学全集

『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』

著者
辛酸なめ子 [著]
出版社
祥伝社
ISBN
9784396634971
発売日
2016/05/11
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』 辛酸なめ子著

[レビュアー] 長島有里枝(写真家)

 古今東西の恋愛小説や随筆から選(え)りすぐられた作品を、著者独特の視点で読み解いて紹介する本書は、電車で読む場合に注意が必要だ。他人の目を気にしがちな人はあらかじめマスクを装着するなどして、堪(こら)えきれない笑いを隠す手立てを準備して欲しい。

 古くは紀元前イタリアの「恋愛マニュアル本」や『竹取物語』から、近年のケータイ小説や官能小説まで、錚々(そうそう)たる書名が目次に並ぶ。「文豪だって、恋する姿は恥ずかしい。」という帯の言葉どおり、主人公の恋愛には作者の体験が反映されているという仮定のもと、飄々(ひょうひょう)とした語り口の解説が展開される。個人的に共感した女主人公の言葉(岡本かの子『老妓抄』)や、衝撃を受けた濡(ぬ)れ場(岡本敏子『奇跡』)などが取り上げられていて、教科書で知った人たちも身近に感じられる。

 近現代の男性作家が書く恋愛小説は苦手だが、著者の「非モテ男子の妄想」(森鴎外『ヰタ・セクスアリス』)、「お前呼ばわりで偉そう」(武者小路実篤『愛と死』)などの率直な感想に溜飲(りゅういん)が下がると同時に、作品への新たな理解を喚起された。 祥伝社 1500円

読売新聞
2016年7月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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