『呉越春秋 呉越興亡の歴史物語』 趙曄著

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呉越春秋

『呉越春秋』

著者
趙 曄 [著]/佐藤 武敏 [著]
出版社
平凡社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784582808735
発売日
2016/07/11
価格
3,132円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『呉越春秋 呉越興亡の歴史物語』 趙曄著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 「呉越同舟」という諺(ことわざ)が人口に膾炙(かいしゃ)しているように、春秋戦国時代の呉と越は宿命のライバルであった。両国は30年以上にわたって激しい戦いを繰り広げ、ついに越王勾践(こうせん)が呉王夫差(ふさ)を敗死させる。本書は二国の興亡を描いた歴史文学(後漢代に成立)の本邦初の全訳である。

 2500年前の呉越の戦いが、何故かくも人々の心を揺さぶるのか。それは、夫差の賢臣、伍子胥(ごししょ)や勾践の参謀、范蠡(はんれい)など登場人物の個性が尖(とが)っていて強烈な印象を与えるからである。父兄を殺された伍子胥の屍(しかばね)に鞭(むち)打つ復讐(ふくしゅう)譚(たん)の凄(すさ)まじさ、敗戦で夫差の臣となった勾践のこれまた復讐譚の執念深さ、加えて「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」「日暮れて途(みち)遠し」「狡兎(こうと)死して走狗(そうく)烹(に)らる」など有名な格言の宝庫であることも大きな魅力となっている。

 本書は、呉の歴史5巻、越の歴史5巻から成っている。多くの歌が収められており、「史記」とはまた違った趣があって、読んでいてとても面白い。訳者は1920年生まれだが、文体は平易で読みやすく注も配慮が行き届いており、学問への真摯(しんし)な姿勢に頭が下がる。佐藤武敏訳注。 東洋文庫 2900円

読売新聞
2016年7月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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