コルビュジエが世界遺産! 20世紀建築の潮流を学ぶ

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現代建築入門

『現代建築入門』

著者
ケネス・フランプトン [著]/中村 敏男 [訳]
出版社
青土社
ISBN
9784791769384
発売日
2016/06/24
価格
2,808円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

コルビュジエが世界遺産! 20世紀建築の潮流を学ぶ

[レビュアー] 西田藍(アイドル/ライター)

 今年7月17日、ル・コルビュジエが日本に残した唯一の建築作品、国立西洋美術館(1959)が世界遺産に登録された。正式名称は「ル・コルビュジエの建築作品─近代建築運動への顕著な貢献─」。7か国17作品の、国境をまたいだ世界遺産(トランス・バウンダリー・サイト)である。

 知識はないが、建築物には惹かれる。特にお気に入りなのがコルビュジエの影響を大きく受けたという、前川國男の作品だ。幼少期から親しんだ福岡市美術館、熊本県立美術館は、私の「建築」の原風景だ。諸々、建築に手招きされている気がしていたこの頃、つい手にとってしまったのがこの本である。著者は、建築史家。20世紀建築の潮流を、シンプルにまとめている。

 第1部、1887年から1986年の“アヴァンギャルドと継続”。中産階級の登場と増加、新たな土地の建設。コルビュジエは著書『建築をめざして』の中で、新しい時代の到来を歓迎している。産業革命以後の、工業製品に宿る新しい精神を、彼は讃えた。構成主義が作り出したすばらしき集合住宅、ユニテ・ダビタシオン!

 第2部、1910年から1998年の“有機主義的思想の変遷”。フランク・ロイド・ライトはシカゴ万博で見た日本出展の鳳凰殿に影響を与えられた。その彼がのちに世界に与えた影響。建物によって、人間をより人間的にする手法が見て取れる。

 第3部、1935年から1998年の“普遍文明と国民文化”。そして第4部、1927年から1990年の“生産、場所、そして現実”。著者は、建築において、政治学の必要性を指摘する。さて、場所性が希薄になった21世紀の都市に、建築はどうアプローチしていくのか。

 原題は『20世紀建築の展開』であり、決して入門書ではない。タイトルに騙されたものの、背伸びして読んだ価値のある本であった。名建築の図版、写真と共に、建築家の思想と作品遍歴が語られる。難解な言葉の解釈は、建物自身が示してくれる。

新潮社 週刊新潮
2016年8月4日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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