大森望「私が選んだベスト5」 夏休みお薦めガイド

レビュー

0
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ゴールドフィンチ 1
  • 罪の終わり
  • カメリ
  • 皆殺し映画通信 冥府魔道
  • ヒロインたちのうた ~アイドル・ソング作家23組のインタビュー集~

書籍情報:版元ドットコム

大森望「私が選んだベスト5」 夏休みお薦めガイド

[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)

 夏休み、時間を気にせず読み耽りたい大作と言えば、ドナ・タートの世界的ベストセラー小説『ゴールドフィンチ』全4巻。題名は、17世紀オランダの画家ファブリティウスの名画「ゴシキヒワ」を指す。A4サイズより少し大きいぐらいの小さな油絵だが、主人公テオは、13歳のとき、メトロポリタン美術館でこの絵と運命の出会いを果たし、その日を境に人生が一変する。ディケンズ『大いなる遺産』の現代版とも評される、恋あり犯罪あり活劇あり、波瀾万丈の人間ドラマ。

 対する東山彰良『罪の終わり』は、22世紀のアメリカが舞台。文明崩壊後の世界を描く超弩級の傑作『ブラックライダー』の前日譚にあたるが、『ゴールドフィンチ』と同じく、こちらも導入部は瑞々しい少年小説。15歳の主人公が、拾ったバイクを動かすエンジンを求め、荷車つきの自転車で片道80キロの道のりを旅する挿話から、物語の世界にぐいぐい引き込まれる。

 同じ“文明崩壊後”ものでも、北野勇作の連作短編集『カメリ』はペーソスあふれる日常の物語。赤いリボンをつけた模造亀(レプリカメ)の女の子を主役に、人間がいなくなった世界の奇妙に懐かしい風景が描かれる。

 柳下毅一郎『皆殺し映画通信 冥府魔道』は、邦画メッタ斬りレビュー集の第3弾。今回は、「寄生獣」「さよなら歌舞伎町」「ジョーカー・ゲーム」「劇場版MOZU」などの有名作品から、聞いたこともない企画ものまで、2015年の50本を斬りまくる。けだし、修羅の道は果てしない。

 南波一海『ヒロインたちのうた』は、アイドルソングの作り手(作曲家・作詞家)23組のインタビュー集。昨年、彗星のごとくデビューした謎の新人(経歴が謎すぎて、誰か有名作家の変名では……とも噂された)星部ショウの初インタビューなど、貴重な証言満載。

新潮社 週刊新潮
2016年8月11・18日夏季特大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加