『戦国大名武田氏の家臣団』 丸島和洋著

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戦国大名武田氏の家臣団 信玄・勝頼を支えた家臣たち

『戦国大名武田氏の家臣団 信玄・勝頼を支えた家臣たち』

著者
丸島 和洋 [著]
出版社
教育評論社
ISBN
9784866240015
発売日
2016/06/23
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『戦国大名武田氏の家臣団』 丸島和洋著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

強固な団結の実態

 人は城、人は石垣、人は堀――。後世にその強固な団結が伝説化した武田信玄の領国や家臣団の実態は、はたして如何(いか)なるものだったのか?

 今年の大河ドラマ「真田丸」で、初めて「国衆(くにしゅう)」という言葉を耳にした人も多いことだろう。これまで、戦国大名の領国は「武田色」や「北条色」の一色に染め抜かれていると考えられてきた。ところが、その内部には、真田家のように「国衆」や「郡司」とよばれる大名未満の家々があちこちに存在し、独自の支配を実現していた。しかも、その領国の色彩は、個々の領域ごとに微妙なグラデーションがあったし、場合によっては「武田色」とも「北条色」ともつかない中間色の部位も存在していたのだ。

 本書は、武田家を例に、そうした大名領国と家臣団の実像を、最新の研究を踏まえて、丁寧に解説してくれる。武田家は、彼ら独立性の強い家臣たちを必要以上に圧伏しようとは考えなかったし、家臣たちのほうも過度に抵抗や独立の動きを示すことはなかった。むしろ彼らは、文書の形式や支配のノウハウなどを武田家から学んで成長していた。

 彼らと武田家の関係は、いわば軍事的な安全保障契約で結ばれた「持ちつ持たれつ」の関係だったのである。だから、ひとたび頼りにならないとみなすや、彼らはいとも簡単に武田家を見放し、べつの大名のもとへ走る。これが「人は城、人は石垣…」の現実だった。

 著者は、本年の大河ドラマの時代考証者の一人。去年から今年にかけて真田氏関係の一般向けの著作を多く刊行している。それらに比べると、本書はやや硬派な印象をうけるかもしれないが、前半部では、信虎・信玄・勝頼の武田家三代の歴史が、しっかりとわかりやすくまとめられている。大河ドラマでこの時代に興味をもった視聴者が、さらに次のステップに進もうとするとき、本書はきっと最良の入門書となることだろう。

 ◇まるしま・かずひろ=1977年生まれ。国文学研究資料館特定研究員などを務める。専門は戦国大名論。

 教育評論社 1800円

読売新聞
2016年7月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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