『鯨取りの社会史』 森弘子・宮崎克則著

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鯨取りの社会史

『鯨取りの社会史』

著者
森 弘子 [著]/宮崎 克則 [著]
出版社
花乱社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784905327547
発売日
2016/05/10
価格
4,320円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『鯨取りの社会史』 森弘子・宮崎克則著

[レビュアー] 奈良岡聰智(政治史学者・京大教授)

 近世日本の捕鯨は、巨富を生み出す一大産業であると同時に、多分に文化や学術と結びついた営みでもあった。本書は、こうした日本的な捕鯨のあり方を、江戸時代に描かれた鯨絵巻の分析を通して明らかにした研究書である。

 油の採取を目的とした欧米の捕鯨と異なり、日本では鯨の全部位を無駄なく活用していた。住民総出で行われた解体・加工の様子が、多くの図版とともに具体的に示されており、圧巻である。捕鯨研究の到達点を示した儒学者大槻清準著『鯨史稿』の成立過程も興味深い。西洋科学から影響を受け、かの『解体新書』と同じ手法で鯨体を解説しているというから、驚きである。

 国際司法裁判所から調査捕鯨を停止すべきという判断を下されるなど、近年日本の捕鯨をとりまく状況は厳しさを増している。その行く末を見定めるためにも、日本人の過去の営為を振り返りたい。

 花乱社 4000円

読売新聞
2016年7月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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