【写真集】『京都の花街 芸妓・舞妓の伝統美』溝縁ひろし 決意や覚悟にドキリ

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【写真集】『京都の花街 芸妓・舞妓の伝統美』溝縁ひろし 決意や覚悟にドキリ

[レビュアー] 黒沢綾子

 現在、京都には主に5つの花街(かがい)がある。八坂神社門前の茶屋から始まった「祇園甲部」と「祇園東」、四条河原に近く歌舞伎とつながりの深い「宮川町」、鴨川と高瀬川の間で船運の要所として栄えた「先斗町(ぽんとちょう)」、そして北野天満宮門前の茶屋を起源に、西陣の旦那衆の奥座敷として発展した「上七軒」。粋な大人しか知り得ない世界というイメージが強いが、京の花街を40年以上撮り続ける溝縁ひろしさんの写真は、そこに生きる芸妓(げいこ)、舞妓(まいこ)たちの姿をいきいきと伝えてくれる。

 だらりの帯をしめ、おこぼを履いた舞妓はどこか初々しい。一方、芸妓の凛とした舞姿や立ち居振る舞いは、日々の鍛錬のたまものだ。少女はいかに舞妓になり、芸妓として成長してゆくのか。祇園甲部の「紗月(さつき)さん」の5年間を追ったドキュメントが特に見応えあり。はんなりした美だけでなく、女性たちの決意や覚悟が焼き付いており、ドキリとさせる。(光村推古書院・2800円+税)

産経新聞
2016年8月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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