【写真集】光を捕まえたい『Light of』蜷川実花
[レビュアー] 産経新聞社
蜷川は跋(ばつ)にこう記す。《光の軌跡に手を伸ばす/空は恐ろしいほど、深く青く高い/光を捕まえたい/助けを求めるその刹那、私達は幸福のなかにいる》
本書は花火とフェスの光をテーマに構成された作品集だ。
フェスの会場では、乱舞する強烈な光をつかもうとするかのような恍惚(こうこつ)状態の群衆の手を切り取る。その刹那、群衆は確かに幸福のなかにいる。
花火会場では、その美しさにため息をつくのではなく、花火が放つ光の一筋一筋、一粒一粒を捕らえようとするかのようにシャッターを切っている。その刹那、蜷川自身もきっと幸福のなかにいたのであろう。
ポップで鮮やかな色を持ち味とする蜷川は平成8年、キヤノン写真新世紀で優秀賞に輝き注目され、13年には木村伊兵衛写真賞を受賞して、写真界に確固たる地位を築いた。
ところが本書では、鮮やかさに紗のかかった作品が大半。光によって個性的な鮮やかさを表現する蜷川が、光そのものをモチーフとしたときにこのような表現をとるのは意味深長である。(河出書房新社・2700円+税)