『会いたかった画家』 安野光雅著

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会いたかった画家

『会いたかった画家』

著者
安野 光雅 [著]
出版社
山川出版社
ISBN
9784634150935
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『会いたかった画家』 安野光雅著

[レビュアー] 牧原出(政治学者・東京大教授)

 まだ幼い子供を連れて図書館の絵本コーナーに行く。子供は同じ本を何度も何度も読み返して満足げだが、こちらは退屈さをもてあまし始める。そんなとき背表紙を眺めやると、たいてい飛び込んでくるのが安野氏の絵本だった。群衆の絵や人のいない静かな風景の頁(ページ)を繰っていた。

 そうした時間を反芻(はんすう)しながら、著者が好んだという画家たちの絵を一つ一つ目にとめると、どことなく著者の絵のように思えてくる。一番好きな画家だというクレーが特にそう。色合いや構図もさることながら、絵の奥に流れる時の静けさが、忘れがたい何ものかへ誘いかけるようだ。

 とりあげる画家の多くは、何か別物と重なりあう。彫刻家になりたかったモディリアーニ、画家志望の写真家アンリ・カルティエ=ブレッソン。ピーターラビットの著者ビアトリクスは植物学者でもあった。どうしてこのような絵が描けるのか、著者は問い続ける。「生まれ直して、彼の歩いた道をたどるほかない」。芸術家のたぎる創作欲が仄(ほの)見える。何でも描いてみたくなるという画家の見極めをなぞってみたい。

 山川出版社 1800円

読売新聞
2016年9月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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