『再考ふなずしの歴史』 橋本道範編著

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再考ふなずしの歴史

『再考ふなずしの歴史』

著者
橋本 道範 [著、編集]
出版社
サンライズ出版
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784883255948
発売日
2016/06/20
価格
2,916円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『再考ふなずしの歴史』 橋本道範編著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

 フナずしとは、琵琶湖で捕れたフナを半年間、米飯と一緒に漬けて発酵させた滋賀県の名産品。その形状と臭気から、納豆・くさやと並び、かなり好き嫌いの分かれる食物だが、その歴史は古代・中世に遡り、こうした発酵食品としてのなれずしこそが日本の寿司(すし)の原型であったとされる。

 ところが、本書によれば、現在のフナずしは江戸時代以降の地道な改良の賜物(たまもの)で、古代・中世のそれとは多くの点で異なる食物だったという。たとえば、古代ではフナずしの米飯は食べない(これは米食の普及により変化)。また、中世のフナずしは初夏に漬け込み、すぐに食べる浅漬け(これは製材技術の発達による桶(おけ)の普及で長期間の漬け込みに変化)。そこには日本文化史の革新が凝縮されていたのだ。あの独特な臭気に粗野な原初性を勝手に感じ取っていた私には衝撃的な結論だ。魚卵の朱鷺(とき)色と米飯の白の色彩はむしろ洗練と形容すべきもの、と本書は誇らしげに語る。

 この記事が載る頃、私は今年も滋賀に出かける予定。どれ、先人の創意工夫に敬意を表して、久しぶりに老舗阪本屋に立ち寄ってみますか。(サンライズ出版、2700円)

読売新聞
2016年9月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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