『隣の隣は隣 わが街神戸』 安水稔和著

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隣の隣は隣 : 神戸わが街

『隣の隣は隣 : 神戸わが街』

著者
安水 稔和 [著]
出版社
編集工房ノア
ISBN
9784892712562
価格
6,480円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『隣の隣は隣 わが街神戸』 安水稔和著

[レビュアー] 牧原出(政治学者・東京大教授)

 神戸在住の詩人安水氏が阪神・淡路大震災から20年を節目にまとめた詩文集である。すでに十年目の文集があり、それ以降の講演、紀行文、随筆、詩、そして日記が収められている。末尾の詩の一節「繰り返し繰り返し気づく」。このリフレインが本書の基調であり、震災後を「生き継ぎ、生き続け」ることの根幹である。

 安水氏にとり震災の記憶は神戸大空襲の記憶に投影される。当時の経験が繰り返し語られるが、どれも微妙に異なる。思い出し書き続けることで、記憶の上に記憶が重なる。日記を読むと、折に触れて各地で起こった地震が記録されている。阪神・淡路大震災から他の地震へと思いやるのだ。

 これまで氏は、江戸時代に東北地方を廻(まわ)った紀行家・菅江真澄の研究をライフワークとしてその足跡を訪ねてきた。神戸にいながら、東日本大震災は身近に起こった災害なのである。阪神・淡路大震災の記憶は、続いて起こる地震の記憶へと連なる。記憶のリフレインを象徴するのが本書の表題だ。「隣」から「隣」への結びつき。読者に手渡された記憶は、これからも誰かへと手渡されていくだろう。(編集工房ノア、6000円)

読売新聞
2016年9月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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