『ケルズの書』 萩原美佐枝著

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ケルズの書 アイルランドの至宝 復元模写及び色彩と図像の考察

『ケルズの書 アイルランドの至宝 復元模写及び色彩と図像の考察』

著者
萩原 美佐枝 [著]
出版社
求龍堂
ISBN
9784763016089
発売日
2016/05/27
価格
6,480円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ケルズの書』 萩原美佐枝著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 55歳でアイルランドを訪れた著者は「世界で最も美しい本」、ケルズの書(聖書)に魅せられる。テンペラ画を習い始めていた著者は、全装飾ページ22葉の復元模写を15年間6088時間かけて行った。本書はその記録であり、色彩と図像の解説も本当に面白い。顔料は世界を回って当時のものを求めたが、途中でケルズの書の顔料研究が進み、青のラピスラズリが否定された。折角描いた部分を削り落としたときの耐え難さなど、制作のプロセスも正直に吐露されている。

 4人の福音書記者の1人の足が地に着いていないのは三位一体を意味していると考察できたのは「さあ、始めよう、できるだけ似せて見せる。このページは我が生涯にこの1枚のみ。もし2度描くときには気が狂うであろう」と言い聞かせて各ページを熟視熟考してきた著者ならではの発見だろう。まさに、渾身(こんしん)の書である。著者による英訳が付されている。(求龍堂、6000円)

読売新聞
2016年9月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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