『小説 君の名は。』
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【話題の本】小説『君の名は。』新海誠著 喪失感に抗う切ない物語
[レビュアー] 高橋天地
6月18日に初版が発売されるや約3カ月で16刷、累計発行部数87万部(9月12日時点)に到達したファンタジー小説の大ベストセラー。版元のKADOKAWAは「発行部数10万部は確実。最終的に20万部に届けばいい」(関口靖彦さん)と踏んでいたが、想定外の好結果となった。
本作は、現在公開中のアニメ映画「君の名は。」で監督、脚本も務めた著者が映画の制作と同時並行で執筆したものだ。ちなみに映画は8月26日に公開後、約3週間で興行収入62億円(興行通信社調べ、9月11日時点)を突破し、やはり大ヒットを記録した。
小説の主人公は、山深い田舎町に住む女子高生・三葉と都会育ちの男子高生・瀧。面識のない2人は夢の中で魂が入れ替わるようになる。メモを残してやりとりを重ね、次第に仲良しとなるが、ある日突然、入れ替わりが起きなくなる。かすかな記憶を頼りに瀧は三葉に会いに行く決意を固める。
「喪失感に抗(あらが)う高校生の物語だが、誰かに切実な思いを抱くのは大人も一緒。広く共感が得られたのでしょう」と関口さん。本作と関連書籍を合わせて、累計発行部数は近く150万部の大台に乗る見込みだ。(角川文庫・560円+税)