渕書店 BOOKSTORE FUCHI 「本作は、「プリンと一緒だ」。」【書店員レビュー】
[レビュアー] 渕書店 BOOKSTORE FUCHI(書店員)
おませな女の子の主人公は同年齢の子どもとは遊ばず自殺未遂を繰り返しているらしい女子高生のいるビルの屋上や娼婦らしい女性の部屋や本好きのおばあさんの家を訪ねたりして放課後の時間を過ごす。物語の終わりまで彼らが誰だったかは本当にはわからない。いや、それにしてもわからない。ミステリーとは違う、ファンタジーとも違う、小説の中の言葉を使えば「不思議」。
「人生って虫歯と一緒よ」
「ど、どういう意味?」
「嫌なら早めにやっつけなきゃ。(本文略)」
目の前のことがらを、スヌーピーのピーナッツシリーズのように片づけてゆくかしこさを身につけている彼女。小学生の暮らしぶりを小学生が獲得し得る言葉で描くとこうなるのだな、と。たとえば自分の中に湧いた悩みを「黒いもの」としか表現できない(もしくはすごく的確に表現できてるのかもしれない)。しかし、その彼女も授業で宿題となった「幸せとは何か?」という問いには簡単に答えを出すことができない。それが本作の大きなテーマになっていると思った。
エンディングに何か大きなものが待ち構えていると感じつつも、いつ終わってもいい、そんな相反する気持ちで中盤以降読み進めていった。なにしろ、「人生はプリンと一緒(本文)」なのだから。