『前科おじさん』
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「前科おじさん」 大麻所持で逮捕のDJによる笑える懺悔?録
[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)
12年前、人生で一度だけボクが高校で講演会をやったときのテーマが、芸能界のドラッグ事情だった。
別に真面目なことを話したわけでもなく、ドラッグで捕まった芸能人のバカ話をしてから「それぐらい日本でドラッグをやるのはリスクが高くて一切オススメできない」と高校生に忠告する感じだったが、大麻所持で逮捕された高野政所の自叙伝に書かれていたのも要はそんなことだった。
テレビでも「渋谷の路上で大麻所持 ミュージシャンの男を逮捕」と大々的に報じられた、イカつい外見のDJ兼クラブの店主なので、いかにもドラッグをやりそうに思われるんだが、彼は「女性とは全く縁がなく」「童貞喪失は二六歳の時、やむにやまれず川崎のソープ」だったりで、そういう世界とは無縁だと思われていた側の人間だった。
それがファンコットというインドネシアのちょっと間抜けなダンスミュージックに出会ったことで人生が激変。ラジオパーソナリティーになったり、インドネシアまでファンコット調査に行ったりするまでになるんだが、どうやらそこに落とし穴があった模様。ラジオ等ではおもしろおかしく話していたけれど、現地でのファンコットは「ドラッグやマフィアや売春とは切っても切り離せない音楽」であり、「客の九割がドラッグを食って頭をガンガン振っているというヤバいもの」だったのだ!
出所後、マッサージ店で働き始めた彼が、「これじゃ、まるで客を中毒にして長期的に金をむしり取ろうとするドラッグの売人じゃないか! マッサージはドラッグだ! そしてマッサージ師は文字通り〝プッシャー(押す人、麻薬の売人を指すスラング)〟だ!」と気付いたように、世の中には中毒性があるものはいくらでもある。彼は「逮捕された後からなぜか酒が飲めるようになったんだ。酒は最高だ! 何てったっていくら飲んでも逮捕されないし!」とも言っているが、どうせやるなら合法のものに限るのであった。