『折々の民俗学』 常光徹著

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折々の民俗学

『折々の民俗学』

著者
常光 徹 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
社会科学/民族・風習
ISBN
9784309226743
発売日
2016/07/26
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『折々の民俗学』 常光徹著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

 「食べ物を箸と箸で挟み合ってはいけない」「箸で茶碗(ちゃわん)を叩(たた)くと貧乏になる」。そういえば、子供の頃、祖母からよく言われたっけな。

 昔の子は近所のお兄ちゃん、お姉ちゃんとよく遊んでたけど、今の子は横並びの同学年としか遊ばない。あれは子供の「生きる力」を育むうえで、どうなんだろう?

 盛り場の客引きから「お兄さん」と呼ばれずに「社長」と呼ばれるようになるのは、何歳からだろう?

 そんな郷里の思い出話や、移ろいゆく身辺雑事の諸々(もろもろ)が、博識の学者の手にかかると、知らぬ間に広く深い世界につながってゆく。本書は『学校の怪談』や『しぐさの民俗学』で知られる民俗学者が郷里の新聞に綴(つづ)った随筆集。

 ふだん当たり前に見聞きしている事柄が、どのような心意に支えられているのか。著者の飄々(ひょうひょう)とした語りに魅(ひ)かれて読み解くうちに、読者は「民俗学」という学問の特色や魅力も知ることができる。

 同じ学者として、こんな洒脱(しゃだつ)なエッセイをいつかは書いてみたいものだ。しかし、それには当方、まだまだ年季が足りないようで…。

 河出書房新社 1500円

読売新聞
2016年9月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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