『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』 町中華探検隊著

レビュー

12
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町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう

『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』

著者
町中華探検隊 [著]
出版社
立東舎
ISBN
9784845628230
発売日
2016/08/19
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』 町中華探検隊著

[レビュアー] 清水克行(日本史学者・明治大教授)

みんないい顔、違う顔

 ラーメン専門店でも高級中華料理店でもなく、ラーメンの他にカツ丼やカレーライスなども提供する、「可もなく不可もない」町の大衆中華食堂。それが「町中華(まちちゅうか)」なのだそうだ。そういえば、子供の頃には、そんな町中華が近所に2~3軒はあった。しかし、気づけば1軒も無くなっている。

 本書は、町中華が消滅の危機に瀕(ひん)していることに焦りを覚えた北尾トロさんをはじめとするメンバーの町中華探訪記である。出前とカウンター注文を同時にこなす、おじちゃんとおばちゃんの芸術的な連携プレーの秘密。本場のものとは似ても似つかぬメニューが「チャンポン」として売られている謎。3軒が向かいあう町中華激戦区で、さほど美味(おい)しくもない1軒が生き残っている理由。それらが明らかにされていくなかで、彼らは自分たちが町中華に「昭和」の歩みを読みとっていることに気づきはじめる。

 あえて美味しくなさそうな未知の店に入るマゾっ気と、ノスタルジーから始まった町中華探検が、だんだん真剣味(愛の深まり?)を帯びてくるところが、最大の読みどころだ。著者自身の幼年期の家族団欒(だんらん)の記憶も蘇(よみがえ)り、人情味あふれる出会いにも行き着くくだりでは、涙やそれ以外のもの(!)まで溢(あふ)れ出す。

 マニュアル化され全国どこでも無難な味のチェーン店を、彼らは「同じ顔の整形美人がずらっと並んでいるような感じ」という。それに対し、町中華は一つとして同じものはなく「みんなホントにいい顔をしてる」と。グルメサイトの☆の数に振り回されるのに、そろそろウンザリしてきた。どうせ食べるのなら、一抹のスリルと微(かす)かな郷愁も味わいたい。そんな向きに町中華探訪は意外にオススメかも知れない。

 町中華探検隊は入隊自由。とりあえず最初のアタックは、いつも前を通るけど、一度も入ったことのない、あのお店。そう、まずは、あそこから始めてみては、どうだろうか?

 ◇まちちゅうかたんけんたい=隊員は北尾トロ、下関マグロ、竜超。滅亡の危機にある町中華の研究、記録を行う。

 リットーミュージック 1500円

読売新聞
2016年9月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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