『ニュートリノ』 多田将著

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『ニュートリノ』 多田将著

[レビュアー] 柴田文隆(読売新聞社編集委員)

 ニュートリノはとても身近なのに、かなり付き合いの悪い素粒子だ。あなたの体に毎秒600000000000000個も降り注いでいるが、体の原子とぶつかるのは一生待って1個程度。あとは全部通り抜けてしまう。

 電気的に中性(neutr)で非常に小さい(ino)ため、他の物質とほとんど反応しない。検出が難しい。

 この不思議素粒子、出自から普通でなかった。

 中性子が陽子と電子に崩壊する際、一定であるべきエネルギーが減ってしまう現象が見つかる。天才パウリは1930年、こっそりエネルギーを持ち出す粒子の存在を予言。実際には観測できないだろうとも言ったが、何と26年後、原子炉から検出された。

 スーパーカミオカンデなどの検出器を駆使し、この分野をリードしてきたのは日本。小柴昌俊、梶田隆章両博士がノーベル賞を受け、今後も成果が期待されている。著者もニュートリノの性質を調べる実験に携わる物理学者。

 『すごい宇宙講義』を読んだ時も思ったのだが、学者がこんなにわかる本を書いてもいいものだろうか。

 イースト新書Q 760円

読売新聞
2016年9月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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