明治初期日本の原風景と謎の少年写真家 アルフレッド・モーザー 著

レビュー

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明治初期日本の原風景と謎の少年写真家 アルフレッド・モーザー 著

[レビュアー] 飯沢耕太郎

◆人、建物の静けさ写す

 このところ、幕末・明治初期に撮影された古写真に注目が集まりつつある。新たな写真が次々に発掘され、これまであまり取り上げられなかった写真家にもスポットが当たるようになった。本書で紹介されている、オーストリア・アルトアウスゼー出身のミヒャエル・モーザーもその一人である。

 モーザーは、写真家のヴィルヘルム・ブルガーの助手としてオーストリア=ハンガリー帝国の東アジア遠征隊に同行し、一八六九(明治二)年に十六歳という若さで日本に来た。彼はそのまま横浜に残り、ジョン・レディ・ブラックが発行していた英字新聞『ファー・イースト』の写真撮影を担当するようになる。それからウィーン万博の通訳を務めていた時期を除いて、七六年までの七年余りを日本で過ごした。

 モーザーが撮影したのは、まさに明治新国家が成立し、「文明開化」の波が押し寄せてきた、激動の時期の日本である。にもかかわらず、彼の写真には建物や人物たちが静かな雰囲気で、しっかりと細部まで写り込んでいる。それでも時に、心の揺らぎを隠しきれない写真も残っているのが興味深い。

 本書を執筆したのはミヒャエルの孫にあたるアルフレッド・モーザー。残された古写真のアルバムを紐解(ひもと)き、祖父の謎めいた生涯を丁寧にたどっている。
 (宮田奈奈訳、洋泉社・2700円)

 <Alfred Moser> 1948年オーストリア生まれ。ウィーン大の元化学講師。

◆もう1冊 

 須藤功編著『図集 幕末・明治の生活風景』(東方総合研究所)。来日外国人が日本の町や人々の暮らしを描いた画集。

中日新聞 東京新聞
2016年10月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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