『新 怖い絵』
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【話題の本】『新 怖い絵』中野京子著 “恐怖”で名画読み解く…展覧会も決定
[レビュアー] 産経新聞社
忘れがたい絵が、必ずしも美しい絵とはかぎらない。心に引っかかる何か-それは人間の醜さや怨念であったり、社会の暗部、歴史の闇だったりする。
ドイツ文学者の中野京子氏が「怖い絵」を上梓(じょうし)したのは9年前。“恐怖”で名画を読み解く同書は大きな反響を呼び、続々シリーズ化、文庫化されてきた。そして来年には、「怖い絵展」が兵庫県立美術館と東京・上野の森美術館で開かれることが決定。期待が高まる中での新刊登場である。
フリーダ・カーロ「折れた背骨」やフォード・マドックス・ブラウン「あなたの息子を受け取ってください、旦那さま」のように、ひと目見てゾクッとさせられる絵もあれば、背景を知って初めて怖さをおぼえる作品も。ティツィアーノ・ヴェチェリオの肖像画「パウルス三世と孫たち」の場合、画家と発注者(パウルス三世)の思惑やその結末を知ることで、恐ろしさが倍加する。農村風景を描いたジャン・フランソワ・ミレーの「落穂拾い」も、見方によっては“危険な絵”となる。
絵を見るのに知識はいらない。けれども本書を手に絵を「読む」ことで、味わいは深くなり、やがてやみつきになる。(KADOKAWA・1800円+税)