【聞きたい。】開発好明さん『新世界ピクニック』 アート作品をトラックに積み被災地訪問

インタビュー

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新世界ピクニック

『新世界ピクニック』

著者
開発好明 [著]
出版社
リトル・モア
ISBN
9784898154441
発売日
2016/04/15
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】開発好明さん『新世界ピクニック』 アート作品をトラックに積み被災地訪問

[レビュアー] 産経新聞社

聞きたい_開発好明さん
『新世界ピクニック』(リトルモア)を刊行したアーティストの開発好明さん

 東日本大震災の被災地に建設された巨大な堤防の前で、放射性廃棄物を詰めたフレコンバッグのそばで、シートを広げて弁当を食べる。本書はそんな写真群からはじまる。震災をモチーフにした作品集に、なぜポップなタイトルを?

 「楽しげな響きと内容のギャップがあると思うんですけど、楽しい日常に急に大きな変化が起きて、その変化さえどんどん日常化していく。そういう事態への危惧も含めて、一見ライトだけど、だからこそ何かを感じてくれたらいいなと」

 震災直後、ボランティアとして汗を流し、アート作品をトラックに積んで被災地を巡った。「ラーメン屋さんだったら炊き出しをしようと思うでしょう。アートを仕事にしている僕がアートを持って被災地を訪ねるのは自然だった」

 無人になった地域の現実に衝撃を受けて、制作に取りかかる。「なにができるんだろうと。もちろん悩みました。アートの表現としてもどうなのか。でも風化していく方が怖い。それを少しでも引き戻せれば…という感じでした」

 原発事故から1年後、福島県南相馬市の避難区域の手前に、視察に来る政治家のための休憩所「政治家の家」をつくり、国会議員に招待状を送った(現在まで訪問者はゼロ)。そんなふうに、被災地での体験や出会いから作品が生み出されていった。「ほんとにひとつひとつ生まれて、いま、ここに至ってます。通過点かもしれない。ここからまた別のものが生まれてくるかもしれない」

 最近はアーティストという立場にもこだわっていないそうだ。「寄り添うってことが僕にとっては大切。自分の世界観を振りかざしても理解してもらえないし、必要ともされない。お手伝いという形でしたが、行ったから見えてくることって多い。でもみんな行きましょうよとも言えない。行かない人の代わりに、見てきたことを伝えるっていうのは必要なことじゃないですか」(リトルモア・2000円+税)

 ◇

【プロフィル】開発好明

 かいはつ・よしあき 昭和41年、山梨県生まれ。アーティスト。観客参加型の美術作品を中心に制作。国内外で発表を続ける。

産経新聞
2016年10月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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