『サイボーグ化する動物たち』 エミリー・アンテス著

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『サイボーグ化する動物たち』 エミリー・アンテス著

[レビュアー] 岡ノ谷一夫(生物心理学者・東京大教授)

 ヒトは身の回りの環境に手を加え、その環境に自らを適応させることで変化してきた。動物たちも環境の一部として手を加えられてきた。家畜やペットは、野生動物の特定の形質を選択して交配を続けてきた結果である。ここまでならばあくまで自然選択の延長であった。しかし現代では、遺伝子レベルでの改変や情報機器との接合によるサイボーグ化も始まっている。

 本書は動物改造の事例を紹介し、読者に倫理的判断を迫る。蛍光色素を発現するよう遺伝子組み換えされた観賞魚、血栓防止剤を含む乳を出すヤギ、臓器がヒト細胞からなるヒツジ。私は少しずつ抵抗感を持ち始める。クローニングによるペットのコピーには違和感があるが、絶滅危惧種の複製は許容範囲か。障害動物のための装具開発は飼育動物には有効だ。だが、動物の神経系を操作してリモコンにする技術や記憶力を上げる技術に私は疑問を持った。

 ヒトはこれらを自らに試すはずだ。生命制御技術の進捗(しんちょく)が一望できる本である。同時にヒトがヒトであり続けることができない未来を感じ身震いがした。西田美緒子訳。

 白揚社 2500円

読売新聞
2016年10月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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