『冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場』冲方丁著
[レビュアー] 産経新聞社
昨年8月、人気作家は突然、妻を殴ってケガをさせたという、身に覚えのない傷害容疑で逮捕された。無罪放免されるまで「渋谷署の27番」として過ごした9日間の留置場生活を詳細に描く。
逮捕直後の〈人権侵害祭り〉から、留置場の劣悪な環境、ストーリーありきの取り調べ…。読んでいると暗澹(あんたん)たる気分になるが、精神的にも肉体的にも社会的にも追い詰められる〈不条理なゲーム〉に、〈笑い声を、真っ向からぶつけてやること。それが、ものごとを良い進歩へと導く、ひとつの方法であるのだ〉と、あえてユーモアを交えて描く。(集英社インターナショナル・1200円+税)