『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす』 日本財団子どもの貧困対策チーム著

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徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃

『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』

著者
日本財団 子どもの貧困対策チーム [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166610921
発売日
2016/09/21
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす』 日本財団子どもの貧困対策チーム著

[レビュアー] 出口治明(ライフネット生命保険会長)

 子供の貧困がよく話題に上るが、その実態を知っている人は意外と少ない。本書は日本財団 子どもの貧困対策チームがまとめたものであるが、この問題の「鳥瞰(ちょうかん)図」がとてもよく分かる好著だ。

 まず6人に1人と言われている子供の貧困の実態と、貧困が世代を超えて連鎖することが数字・ファクトで明瞭に示される。次いで子供の貧困を放置すると、将来の所得の減少が総額42兆9000億円、財政収入の減少が15兆9000億円に達するとの試算結果が明らかにされる。子供の貧困はまさに「ヒトゴト」ではなく「ジブンゴト」であり、放置すると日本の未来を確実に閉ざすのだ。学費を稼ぐために風俗の仕事に就く女性が少なくないという実態を挙げ、「福祉は風俗に負けている」など現場の声が当事者の肉声を通して語られるが、どれも内容は重い。

 後半は問題解決の方向性が語られる。貧困の連鎖を断ち切るためには、社会的相続、すなわち自立する力の伝達行為に注目すべきだ。自立する力の要素は、お金、学力(認知能力)、非認知能力(自制心、やり抜く力など)だが、社会的相続のステップがライフサイクルに沿って具体的に示される。子供の貧困対策の効果を測る方法についてもアメリカの先進事例の丁寧な解説があり、最後に政府・自治体やNPO団体などの取り組みを紹介している。

 子供の貧困の実態はよく理解できたが、「ではどうするか」という部分については、もう少し踏み込んで欲しかった。本書は一人ひとりができることとして「寄付やボランティア、発信」を呼びかけているが、本筋は一人親家庭などを対象に子供の貧困対策の予算をしっかりと確保することではないか。予算の裏付けのない政策は絵に描いた餅に過ぎない。財源が不足するなら消費税等の負担を上げていい。マクロで見れば、我が国は小負担・中福祉の国であって、持続不可能なことは明らかなのだから。子供は僕たちの未来。

 ◇日本財団 子どもの貧困対策チーム=子どもの貧困問題に対応する専任部署として2015年、同財団内に設置。

 文春新書 780円

読売新聞
2016年10月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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